INANAMI HOUSE

サーフィンを趣味とする夫婦と、3人の子どもたちのための住宅。東京五輪のサーフィン会場にもなった釣ヶ崎海岸にほど近い敷地周辺は、古民家が点在し、敷地南側には田んぼが広がっている。
稲穂が風になびき、ときに大きくうねる様が、どこか海原の風景を思わせた。家族が海で過ごす時間と、田園風景に彩られた日常とが、ひとつの体験として記憶の中で重なり合う。
そんな住まいのイメージから計画が始まった。
まず考えたことは、海へと続く北側と南側の風景が建物によって分断されないよう、どう「抜け感」をつくるかということだった。母屋(おもや)と納屋の間に南北に貫く半屋外空間を設け、海へと出かける際の準備や片付けといったアクティビティの受皿とした。また、メイン玄関から帰宅する際、
ポーチから玄関、リビングと視線が抜け、田んぼの景色が顔を覗かせる。
東西方向においても2本の「抜け」が存在する。建物を横断する回廊は、常に家族の気配が感じられる開放的な空間構成と、明快なゾーニングの要となっている。さらに、プレイルームの建具を開け放つと、オープンキッチンから反対側の納屋のサーフラボまでがひとつながりとなる。
これら計4本の軸が交錯し、視線があらゆる方向に抜け、子供たちにとっても楽しい回遊性を生む。
「家の中でも外にいるような感覚で過ごしたい」という家族のために、心地よい風が縦横に通り抜ける
計画とした。




母屋と納屋の間の半屋外空間 「Alley」は、海へ出かける際の準備や片付け、ボードの手入れなどの屋外アクティビティをサポートする。心地よい風が抜け、帰宅時には建築によって切り取られた田園風景が家族を出迎える余白の空間とした。

玄関前の回廊からリビングを見る。柱、梁、垂木といった構造材が遠近感を 強調しながら視線を風景へと導く。

プレイルームは小さな舞台のような設えとし、レベルを上げることで遊ぶ子供たちとリビングで団欒する大人たちの目線が合うようにした。リビング側に張り出す縁側が両空間を柔らかく繋ぐ。

一階の大屋根頂部を2階ボリュームの腰壁まで上げ、2階部分が沈み込んだような印象を与えている。
北側おいても、二層分の外壁を1階の大屋根で分節することで、建物の重心を低く見せ、周辺への圧迫感を軽減した。