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Philosophy
アメリカで過ごした高校時代、夏休みに一時帰国し、佐賀県嬉野の陶芸家・野村淳二先生のもとで住み込み修行をさせていただいた経験が、私がものづくりを志すきっかけとなりました。当時、先生は子供用の茶碗をつくられており、小さな手への馴染みや、転びにくい器と高台のプロポーションに思いを巡らせながら、ろくろに向かわれるその姿は、ものづくりの尊さを体現する在り方として、強く胸に刻まれました。使い手一人ひとりの感性に寄り添い、何十年も変わらず「隣人」のために作陶し続ける先生の姿勢が、私が建築に向き合う上でのフィロソフィーの原点となっています。
飛行機の窓から眼下を眺めると、都市はまるで大地に張りつく巨大生物のように見えます。徐々に高度が下がるにつれて解像度は上がり、それが村やまち、さらに個々の建物であることを感覚として再認識させられます。そして、その無数の建物の中に、ひとつとして同じでない感性や営みが息づいているという事実に途方もなさを覚えると同時に、一種の希望が湧いてきます。それは、私たちが住むまち、ひいては社会をより良くしていくということは、いくら俯瞰しても捉え切れない巨大生物と対峙することではなく、個々の感性を通して、目の前の生活を豊かにしていくことに他ならない、ということです。
事務所名の「4_1 (= for one)」は、「個」の視点とスケールをもって、使い手一人ひとりの暮らしや感性に寄り添う設計姿勢を表しています。隣人を思う器のように、身体に馴染み、五感を通して温かな記憶として残る空間をつくっていきたいと考えています。
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