Heliotropic House

大阪の高密度な住宅地における建替計画。
敷地は三方を2項道路に囲まれており、建替えに伴う外壁後退により、大幅な規模縮小が余儀なくされた。その制約下、2台分の駐車スペース、4室の寝室、洗濯室などの住環境を満たしつつ、LDKの開放性が求められた。
三方から迫る道路斜線により必要以上に天井高を上げることは困難であったが、幸い道路に面する三方は太陽の方角と一致した。そこで、向日性をもつ植物のように一日を通して太陽の軌跡をトレースし、移ろう光を享受できる空間を構想した。
断面計画において、外壁を限界まで後退しても、3階テラスのパラペットがどうしても道路斜線にかかってしまう。そこで、パラペットを傾斜させながら延長し、2階外周部をコの字に囲う吹き抜け空間として変形させた。これにより、天井高さを抑えつつ、空間が上部へと連続していくような開放感を与えた。
この吹き抜けボリュームは、3階テラスの手摺りとして立ち上がる。その立ち上がり部分にハイサイド窓を設け、3階外壁に反射した光をLDK内に取り込むようにした。刻一刻と変化し続ける光が、漆喰で仕上げた壁を伝ってその色温度を室内に滲ませる。開放性が限られた住宅地において、季節や日の移ろいを肌で感じられる空間を目指した。

高さ制限に沿うようにパラペットの形状を変形させ、LDKに開放感をもたらす吹き抜け空間とした。
立ち上がりに設けたハイサイド窓 (clerestory) から柔らかな光が降り注ぐ。

コンセプトダイアグラム:太陽の軌跡をトレースするような、スタティックな向日性をもった建築

空間的な広さには限りがあるなか、レイヤー感や素材の表情の重なりによって、数値上では測れない「奥行き」をつくり出すことを意識した。同時に、建築や家具がつくるシャープな角や線を和らげることで、身体や周辺に馴染む親和性の高い空間とした。




朝方の蒼白い陽光、真昼の眩い光、暖色を帯びた夕日。刻々と変化する光の表情が、日の移ろいを伝える。
玄関前の回廊からリビングを望む。柱、梁、垂木といった構造材が広場る田園風景のパースペクティブを強調する。

自然光に包まれるパブリックスペースは、人々が自由に集まるプラザをイメージした設えとした。
建築に沿うように計画した造り付けの家具が、空間に一体感と求心性をもたらす。

開口部は防火上、サッシ一枚の最大可能寸法が大幅に制限され、かつ、枠が無骨になる。
そこで、各サッシのサイズをあえてヒューマンなスケールに分節し、垂直の枠にテーパーをかけ先端を曲面とした「フィン」を設けた。角度によって目隠しとなり、同時に、光を柔らかく内部へ導く。

3面が露出する外観において、曲面とした角は影をぼかし、建物全体を周囲に馴染ませる。
同時に、直線的なエレメントとの対比を際立たせることで、柔らかさの中に凛とした表情をもつ佇まいとした。
